メリデン版訪問家族支援とは?


メリデン版訪問家族支援とは

 

 メリデン版訪問家族支援とは、1970年代から1980年代よりイギリス・アメリカ・イタリア・カナダ・ニュージーランドなど世界各国で普及しているBFTBehavioral Family Therapy=行動療法的家族療法)と呼ばれる家族支援の方法で、日本でもこれまで何度も紹介されています。行動療法的といわれる一方で、単家族への家族心理教育という表現を使われることもあります。


1)   L.カイパース他著/三野善央、井上新平訳、「分裂病のファミリーワーク−家族を治療パートナーにする実践ガイド−」、1995、星和書店

2)   イアン R.H. ファルーン, グレイン・ファッデン著/水野雅文ほか監訳、「インテグレイテッドメンタルヘルスケア : 病院と地域の統合をめざして」、1997、中央法規出版

3)   イアン・R・H・ファルーン,マーク・ラポータ,グレイン・ファッデン,ヴィクター・グラハム‐ホール著/白石弘巳・関口隆一監訳、「家族のストレス・マネージメント−行動療法的家族療法の実際」、2000、金剛出版

4)   ポール・フレンチ, ジョー・スミス, デビッド・シャイアズ, マンディ・リード, マーク・レイン編著/針間博彦監訳、岡崎祐士, 笠井清登監修、「精神病早期介入 : 回復のための実践マニュアル」、2011、日本評論社

5)   ロバート・ポール・リバーマン著/西園昌久総監修、池淵恵美監訳、SST普及協会訳、「精神障害と回復−リバーマンのリハビリテーション・マニュアル」、2011、星和書店

 

※赤枠で囲っている2)、3)、4)はMeriden Family Programme Fadden所長が「メリデン版訪問家族支援」について記載している


メリデン版訪問家族支援と名付けた理由

 その技術の中で、私たちが注目したのが、メリデン版訪問家族支援(Family Work)です。

 

 Meriden Family Programmeで研修が行われている訪問家族支援の技術は一般的にBFT(Behavioral Family Therapy=行動療法的家族療法)やFamily Workと呼ばれています。

 しかし、日本語に翻訳する際、日本では「療法」というと狭義の「治療」とみられてしまいますが、本技術は保健医療福祉、そして行政などでもさまざまな領域でとても大きな役割を果たす可能性がある技術であることから、あえて「治療」や「療法」をあてず、「支援」という言葉をあてました。これまで先達が、ACT(Assertive Community Treatment)に「包括的地域生活支援プログラム」という言葉をあてたことを参考にいたしました。

 

 


英国におけるメリデン版訪問家族支援の歴史

 

 メリデン版訪問家族支援(Family Work) は、1975 年に当時 NIH International Research Fellow として採用された Falloon, I.R.P. が中心となり、Liberman, P. を含む人々らによって Maudsley 病院に入院中の患者へ試行により開発された(Liberman, 2008)もので、社会学習理論(Social learning Theory)に基づき、さらに目標設定やモデリング、行動リハーサル、コーチング、強化、そして宿題というような構造的・指示的な行動療法の技術をも含んだものです。

 特にFalloonらによって開発された家族介入プログラムについては、支持的個人療法を対象とした場合、治療開始 9 カ月後の再発率が、家族介入群 6%と対照群 44%より有意に低く、さらに月 1 回の家族のフォローアップを続けたところ家族介入群 17%と対照群 83%と、再発予防効果は2年後に維持される結果でありました。

 

 この単家族による家族(本人も含む)心理教育のマニュアルや教育媒体が整えられているものがメリデン版訪問家族支援です。その研修をおこなっているのが、Meriden Family Programmeという英国BirminghamにあるNHSの研修機関で 、精神障害のある人を含めた家族全体の精神保健福祉サービス開発とそのサービス提供者へのトレーニングを目的に1998年に開設されたものです。取り扱っている技術は、先ほど紹介したFalloonが中心になり構成したもので、このMeriden Family Programmeに行われている家族支援モデルをメリデン版訪問家族支援と呼んでいます。


メリデン版訪問家族支援の概要

 

(1) 目的

1 今ある課題を家族が解決しストレスへの対処能力を高めることで、家族内のストレスを軽減し再発率を減少する

2 将来、家族が自分たちの力で困難を乗り越えていくためのより効果的な問題解決や目標達成のスキル習得の機会を提供する

3 精神障害をもつ人を含めた家族が自立し、それぞれの生活を生きることを支援する

 

(2)方法

 精神障害のある人を含めた「単家族」に対して、支援者1名ないしは2名の訪問によって支援を提供する。

 

(3)内容

 通常、10 から 14 のセッションが提供されます。セッションでは、1)関係づくり、2)アセスメント(個々の家族メンバー、家族のコミュニケーション方法、問題解決方法など)、3)精神疾患や治療などの情報共有(心理教育とは表現されない)、4)コミュニケーショントレーニング(傾聴、肯定的な感情の表現、好意的な要求の仕方、肯定的でない感情の表現など)、5)問題解決と目標達成、6)再発の初期兆候の認識と再発予防計画、7)危機介入、8)その他の技能習得について家族同士のポジティブコミュニケーション技術の獲得をベースに介入されます。それらには本人を含めた家族メンバー全員が参加し対応することを奨励されますが、まずは始めたいひとりからでも開始することができ、家族の個々のニーズや状況に応じて組み合わせて提供されます。

 


 メリデン版訪問家族支援の確立された研修システムの魅力

 この支援技術を私たちが注目しているのはもう一つの理由があります。

 それは研修の媒体であるマニュアルやDVDの存在とともに、確立した研修プログラムの存在です。

 たとえばこのメリデン版訪問家族支援を日本に導入するには、まずは英国バーミンガムでの基礎研修において、ケアラーへの理解、アセス メントの重要性、基本的な支援スキルに加え、心理教育とコミュニケーションスキルトレーニ ングの技術、そして家族会等の役割理解を修得します。その研修の終了後は実際に日本においてメリデン版訪問家族支援を用いた実践を行い、その実践について Skype 等で英国 Meriden Family Programme スタッフがスーパービジョンを行います。それらのスーパービジョンを経た上で、その後トレーナーズコースの受講を終了すると、そのスタッフはトレーナーとしてはじめて日本で日本語による研修を行うことが可能となります。

 この メリデン版訪問家族支援を普及する手法について Meriden Family Programme では カスケードモデル(Cascade Model、段々畑理論) と呼び、英国で短期間に多くの専門職に、しかもその地域にあった効果的な方法として実践することにつながるため、とても効果的であることを明らかにしています。

 この手法を日本でも採用しており、現在4名のトレーナーをさらに増やしていくことで、日本で基礎研修受講者を増やし、スーパーバイズをしていくシステムを確立していくことを目指しています。


日本での試行を開始しています

 

 一般社団法人における広報普及事業とは別に、文部科学省補助金の研究事業(研究責任者・京都ノートルダム女子大学・佐藤純)で、日本においてメリデン版訪問家族支援の試行と評価が開始されています。

 その試行でひととおりのメリデン版訪問家族支援を終えている本人・家族も出てきています。

 試行については、まずは日本のシステムにフィットするように訪問看護から開始しています(家族支援は療養看護のひとつですから、訪問看護の枠組みで十分提供可能です)。

 受けた本人・家族からは「受けて損はない」と高い評価を受けています。今後メリデン版訪問家族支援の日本におけるエビデンスを明らかにしていきたいと思います。